【里山文化、農村を活用した教育環境の整備事業】
都市農村交流による農地保全事業
「たねもみプロジェクト」は
都市農村交流による農地保全事業の新しいかたち
人口減少、高齢化等により耕作ができなくなった圃場(ほじょう=農作物を栽培する場所)は日本全国で増え続けています。
圃場での耕作は単に作物を作るだけではなく、その地域の景観や文化を維持する役割も大きく担っており、耕作されない土地が増えればその地域の様々な価値も損なわれてしまいます。
数年前からわたしたちの元に、そういった圃場(特に水田)を代わりに耕作してほしいという声が幾つも寄せられるようになりました。
そこでわたしたちは、活動拠点となる地域の耕作維持困難な圃場を10年かけ、農薬や化学肥料をいっさい使わない水田として復活させ、これまでにない新しいプログラムとして作り上げてきました。
土作りや苗作りからはじまり、稲刈り、脱穀、収穫という一連の作業を、都会や近隣の複数のグループと地元農家が一体となって、一連の農作業をともに行っています。
2021年現在、6つグループがそれぞれの田んぼを担当し、総勢150名以上の方々がこのプログラムに参加しています。
このプログラムの特徴
自分たちで責任をもち、主体的に関わり、工夫を凝らす
各グループには担当する田んぼで収穫できたお米をすべて買い取ってもらう仕組みになっています。
ただ、収穫されたお米を買い取るのではなく、目指す収穫量を決め、その金額をあらかじめ先払いをお願いしています。
これにより、各グループともに、少しでも多くの収穫を得るにはどうしたらよいか、独自に考え、工夫し実行するという、作業に真剣に取り組むべき背景が生まれました。
※収益は有機肥料代、農機具、機械燃料、修理代など、圃場の維持のためにに充てられています。
お客様ではなく関係人口に。
そして、住民へ。
各グループは田植え、稲刈りなどの大きなイベント的作業だけではなく、お米を作るための多くの作業に責任を持って携わっています。
シーズン前の耕運作業、水路掃除、苗づくり、田植え後の有機肥料散布、除草作業(農薬は使いません)、畦や周囲の草刈り、稲刈り、脱穀、精米など(日常の水管理などは地元スタッフが行っています)各グループが各々の圃場を担当するだけでなく、集団での農作業の機会創出を重要視しています。
かつての農業は、コミュニティの力(協働)で行われていました。個々の農家も集落という単位でお互いを助け合い、共に収穫を目指していたのです。その結果、コミュニティの人と人とのつながりは強まっていったと考えられます。
近代農業の台頭により、大型機械化や農薬化学肥料などによる作業の効率化によってなくなってしまった、農村がかつて持っていた強さ「人のつながり」を、昔ながらの農法を基軸に現代に蘇らせることで、あらためて農業のもつ社会的役割を再定義することを目指しています。
このプロジェクトを通じ、ここに関わる多くに人たちは、年に何度も田んぼがあるこの地域に足を運び、地域への愛着とともに、その環境を守る一員として、それぞれの立ち位置から深く関わるようになりました。
開放される場所として
この取り組みには、たくさんの子ども達が参加しています。
彼らは田んぼの周りを思い切り走り回り、土や動植物に触れ、とても子どもらしい時間を過ごします。
それは大人たちの喜びにもなり、そして大人自身もまた、仲間たちとの農作業を楽しみ、農作後の食事を含めた団らんや夏には川遊びなど、様々な形で自然豊かな農村環境を楽しんでいます。
また、多くの人が作業に訪れることにより、宿泊や飲食、観光、買い物など地域への経済的効果も実際に生まれています。